労災の定義や審査内容に不服がある際の対処法について

労働問題

労災は労働災害の略称であり、仕事に従事している際に何らかの傷病に見舞われた人が対象となります。
切り傷や骨折などの怪我が一般的なイメージですが、劣悪な環境に起因する健康被害も労災の一種です。
ケースバイケースな事案が少なくないことから、一概に言い切ることは容易ではありません。
しかし、労働に関する行動が原因の傷病は原則、労災と見なされます。

関連:労働災害が発生したとき |厚生労働省

出退勤の途中で怪我を負った場合も仕事中の災害になる

出退勤の途中で怪我を負った場合も仕事中の災害として扱われますが、買い物など寄り道の最中に怪我を負った場合は認められない可能性があります。
マイカー通勤では移動ルートを細かく決めるケースが珍しくありませんが、これは出退勤の途中で起こる事故と労働災害の因果関係を明確にするためです。

雇用者による隠ぺいが起きる可能性

労災に対する補償を受けるのは労働者の権利ですが、一方で雇用者による隠ぺいが起きる可能性は否定できません。
これは仕事中に災害が起きたことが社会的なイメージの下落に繋がることや、被害が著しい場合は行政指導などのペナルティが生じるためです。
また、単に手続きが面倒なので災害を隠ぺいするケースもあります。

労災は3年経過すると時効になってしまう

万が一、労災隠しに遭った場合は速やかに所轄の労働基準監督署に相談するのが賢明な対処法と言えるでしょう。
速やかな対処が必要となるのは、3年経過すると時効になってしまうためです。
時間の経過によって傷病が治ると、仕事と事故の因果関係を証明するのが難しくなるのも理由に含まれます。

傷病手当と労災の違い

類似した補償制度に傷病手当がありますが、労災が業務の際に負った怪我や病気が対象なのに対し、傷病手当は業務とは無関係の傷病が対象になっています。
補償対象が異なるので手続きの際は注意しなければいけません。
仕事中の災害による傷病への補償は自動的に行われるのではなく、雇用者が届出を行い、労働基準監督署の調査で認められて初めて受けることができます。
基準が設けられているものの、人の目で判断することから類似した災害でも結果が異なる可能性は否定できません。

結果が不服の場合は審査請求を行うことができる

場合によっては労働災害と認められないことがありますが、結果が不服の場合は審査請求を行うことができます。
審査請求は労働基準監督署の判断に対し、都道府県労働局の審査官へ判断の見直しを求める請求です。
決定が確認された日の翌日から3か月以内が請求期限なので、手続きは速やかに行う必要があります。
また、請求できるのは災害の当事者か遺族に限られているので注意しなければいけません。

再審査請求を行うことも可能

審査請求でも労働災害が認められないなど、結果に不服があれば再審査請求を行うことができます。
決定した翌日から2か月以内に、労働保険審査会へ再審査請求を行うのが手続きの流れです。
審査請求は口頭でも可能ですが、再審査請求は文書で行わなければいけません。
再審査請求でも労働災害が認められないなど、結果に不服があった場合は行政訴訟を起こすのが正しい対処法になります。

行政訴訟は6か月以内に地方裁判所の本庁で提起する

行政訴訟は6か月以内に地方裁判所の本庁で提起します。
法律の知識が不可欠なことから、行政訴訟は労働に関する案件を多く扱う、経験豊富な弁護士に頼るのが普通です。
仕事中の行動に起因する傷病を客観的に示すのは決して容易ではなく、時間が経つほど証拠を集めるのが難しくなります。
本来なら認められる内容が証拠不十分を理由に受理されない可能性は否定できません。
そのため、労働災害の認定を受けられなかった場合は何よりもまず、審査請求など調査のやり直しを求める動きを見せることが重要と言えるでしょう。

まとめ

雇用者側の甘言に乗せられるなど、トラブルの隠ぺいに加担するような行動は避けるのが賢明です。
後になってから訴えても事故そのものが無かったと解釈されるおそれがあります。
素人考えで安易な判断はせず、法律に則って手続きを進める姿勢が必要です。